相続税対策アパートはやめとけ?「節税になる」の罠をFPが解説|2026年版

住宅・不動産

「更地のままだと相続税が高い。アパートを建てれば評価が下がって節税になりますよ」——土地を持つ人が、ハウスメーカーや建築会社からよくすすめられるのが相続税対策のアパート建築です。たしかに相続税の評価額は下がります。でも結論から言うと、その節税のために背負う多額の借金と、空室・家賃下落・値下がりのリスクで、減らせた税金以上に損をすることが少なくありません。さらに2022年には、行き過ぎた節税が最高裁で否認された事例も出ました。この記事では、相続税対策アパートの仕組み/なぜやめとけと言われるのか/最高裁判決/まっとうな相続対策まで、独立系FPがフラットに解説します。

⚠️ 相続税対策アパートの問題点・ひと目チェック
  • 「評価が下がる=得」ではない:減らせた税金より、値下がり・空室の損失が大きいことも
  • 多額の借金+長期リスク:数千万〜億の借入。空室・家賃下落・修繕・金利を何十年も背負う
  • 相続後に子が苦労:古いアパートとローン(負動産)を相続し、売れず分割もしにくい
  • 行き過ぎた節税は否認2022年最高裁が国税の再評価・追徴を適法と認めた

先に結論

  • 借金してアパートを建てる相続税対策は、節税額より損失が上回りやすい。「評価減=得」ではない
  • 「30年一括借り上げ」とセットの勧誘はサブリースの罠。行き過ぎた節税は否認もある
  • 相続対策はまず税理士に試算。生前贈与・保険の非課税枠・現金の計画活用を「不動産ありき」で考えない

相続税対策アパートとは?仕組みをわかりやすく解説

仕組みはシンプルです。現金で持っているより、その現金で(さらに借金もして)アパートを建てたほうが、相続税の評価額が下がる——これを使った節税策です。

持ち方相続税の評価
現金 1億円1億円額面どおり)
更地(自分の土地)路線価ベース(おおむね時価の8割程度)
アパートを建てた土地・建物さらに評価減(貸家建付地・貸家の評価減)+借入金は債務として差し引ける

こうして評価額(=相続税の計算のもとになる金額)を圧縮するわけです。たしかに相続税は下がる。でも、ここに大きな落とし穴があります。

相続税対策アパートが「やめとけ」と言われる4つの理由

① 節税額より、損失のほうが大きくなりやすい

いちばんの問題はこれ。相続税を数百万円減らすために、数千万〜億円の借金を背負い、値下がり・空室・家賃下落・修繕・金利のリスクを何十年も抱える——トータルで見ると、減らせた税金よりも、物件で出る損失のほうが大きくなることが珍しくありません。「節税できた」と思っても、資産全体ではマイナス、という本末転倒に陥りがちです。

② 多額の借金とサブリースの罠

アパート建築は数千万〜億円のローンが前提。そして多くは「30年一括借り上げ(サブリース)で空室でも安心」とセットで売られます。でもサブリースの家賃保証は2年ごとに減額できるのが普通で、永続ではありません(→サブリースの記事)。空室・家賃下落のリスクは、結局オーナーに返ってきます。

③ 相続した家族が「負動産+ローン」で苦労する

節税のつもりで建てたアパートが、相続する子どもにとっては古い建物・残ったローン・空室リスクという“負動産”になることも。売りたくても買い手がつかない、兄弟で分けられず揉める——相続を“ラク”にするはずが、かえって家族の負担になるケースは少なくありません。

④ 行き過ぎた節税は否認される(2022年最高裁)

2022年4月、相続不動産を通常の評価ルールで低く申告したケースを、国税庁が再評価して追徴課税し、最高裁がそれを適法と認めた判決が出ました(市場価格約14億円の物件を約3億円で申告→否認)。借入が「節税目的」と判断されたことが重視されています。「ルールどおりに評価したつもりでも、行き過ぎた節税は否認されうる」(財産評価基本通達6項)——節税ありきの不動産購入・建築のリスクが、はっきり示されました。

質問する女の子
質問親の土地に「更地のままだと相続税が高い、アパートを建てれば評価が下がって節税になる」と営業が来ました。建てたほうが得では?
FPねこ
FPねこ評価額が下がるのは本当にゃ。でも「税金が減る=得」じゃないにゃ…。数千万〜億の借金を背負って、空室・家賃下落・修繕・金利で、減らせた税金よりも大きく損することがよくあるにゃ。建てたい建築会社が儲かるだけ、ということも多いにゃ。節税は“目的”じゃなくて、本当に必要なときだけ税理士と一緒に考えるものにゃ。

「評価が下がる=得」ではない|トータルで考える

大事なのは、「相続税がいくら減るか」だけでなく、資産全体でプラスかマイナスかで考えることです。

見えている効果見落としがちなコスト・リスク
相続税の評価額が下がる建築費(割高なことも)・多額のローン金利
「家賃収入が入る」空室・家賃下落・修繕費・固定資産税・サブリース減額
「資産が残る」築古化で値下がり、売りにくい、相続で分割しにくい

節税は“目的”ではなく、健全に必要なときだけ、専門家と一緒に検討する手段。「節税になるから」だけを理由に、大きな借金とリスクを背負うのは危険です。

まっとうな相続・資産対策|不動産ありきにしない

そもそも、相続税はすべての家庭にかかるわけではありません。まずは順番に考えましょう。

  • ① 税理士に試算してもらう基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)でそもそも非課税のことも多い
  • ② 生前贈与:暦年贈与・相続時精算課税など、計画的に
  • 生命保険の非課税枠:500万円×法定相続人まで非課税で渡せる
  • ④ 現金・新NISAで“使えるお金”を残す:いざというとき分けやすく、納税資金にもなる

「不動産で評価を圧縮」は、これらを検討したうえでの最後の選択肢。ローンを背負うより、新NISAなどで流動性の高い資産を残すほうが、家族にとってもラクなことが多いのです。

質問する女の子
質問「30年一括借り上げだから空室でも安心」と言われました。それなら手堅いのでは?
FPねこ
FPねこそれサブリースにゃ…。30年保証でも2年ごとに家賃を減額できる条項が普通で、空室リスクは消えないにゃ。しかも相続したお子さんが、古いアパートと残ったローンを引き継いで苦労することも多いにゃ。相続対策なら、まず税理士に本当に相続税がかかるのか試算してもらって、生前贈与や保険の非課税枠、新NISAも含めて考えたほうが、家族にとってずっとラクにゃ🐾

すでに建てた・勧誘されている人へ

「もう建ててしまった」「いま土地活用を勧誘されている」という人は、次を確認しましょう。

  • 勧誘中の人:その場で契約しない。「本当に相続税がかかるのか」をまず税理士に試算してもらう
  • 収支・出口の試算:毎年の収支と、売却した場合の価格・残債を“見える化”
  • サブリース契約は条項確認:賃料見直し(減額)・解約条件・免責期間
  • 相談先:建てた会社ではなく、税理士・独立系FPなど第三者に。家族とも共有する

よくある質問(相続税対策アパートのFAQ)

Q. アパートを建てると、相続税は本当に下がるのですか?
A. 相続税の評価額は下がります。現金より、貸家を建てた土地(貸家建付地)や建物のほうが評価が低く計算され、さらに建築費を借入金でまかなうと純資産が圧縮されるためです。ただし「税金が下がる=得」ではありません。値下がり・空室・家賃下落・金利で、減らせた税金よりも実際の損失が大きくなることが珍しくありません。
Q. 2022年の最高裁判決とは、どんな内容ですか?
A. 2022年4月、相続した不動産を路線価などの通常ルールで低く評価して申告したケースについて、国税庁が再評価して追徴課税した処分を最高裁が適法と認めた判決です(市場価格約14億円→申告評価約3億円が否認)。借入が節税目的と判断された点が重視されました。行き過ぎた節税は、ルールどおりでも否認されうる(財産評価基本通達6項)ことを示しています。
Q. ハウスメーカーの「30年一括借り上げ(サブリース)」付きなら安心では?
A. 安心とは言えません。サブリースの「家賃保証」は2年ごとに賃料を見直して減額できるのが普通で、永続ではありません。会社が破綻すれば保証も止まります。アパート建築+サブリースはセットで売られる典型パターン。詳しくはサブリースの記事もご覧ください。
Q. では、相続対策は何をすればいいのですか?
A. まず税理士に、本当に相続税がかかるのか・いくらかを試算してもらうことが先決です。多くの家庭は基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)の範囲でそもそも相続税がかからないこともあります。そのうえで、生前贈与(暦年・相続時精算課税)、生命保険の非課税枠、現金の計画的活用などを検討します。「不動産ありき」で考えないのが鉄則です。
Q. すでにアパートを建ててしまいました。どうすれば?
A. まず毎年の収支と、売却した場合の価格・残債を試算しましょう。サブリース契約があれば賃料見直し・解約条件も確認を。判断は、建てた会社ではなく税理士や独立系FNなど第三者に相談するのが安全です。相続する家族のためにも、収支と出口を“見える化”しておくことが大切です。

結局どうすればいい?

  • 「節税になる」だけでアパートを建てない。借金と空室・値下がりで損が上回りやすい
  • 「30年一括借り上げ」はサブリースの罠。行き過ぎた節税は否認されることも
  • 相続対策はまず税理士に試算。生前贈与・保険の非課税枠・現金や新NISAで備える
  • 建てた人は収支・出口を試算し、第三者に相談。家族と共有しておく

「評価が下がって節税」の裏に、何十年もの借金と空室リスクがあります。
相続対策は、不動産ありきではなく“まず試算”から🐾

🐾 「相続税対策にアパートを」とすすめられたら

FPねこは独立系の現役FP。建築会社のように物件を売り込むことはありません。本当に相続税がかかるのか、その対策にアパートが必要なのか、家族にとってラクな資産の残し方を、あなたの状況に合わせて無料で相談できます。契約・着工前にぜひご相談を。

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