「更地のままだと相続税が高い。アパートを建てれば評価が下がって節税になりますよ」——土地を持つ人が、ハウスメーカーや建築会社からよくすすめられるのが相続税対策のアパート建築です。たしかに相続税の評価額は下がります。でも結論から言うと、その節税のために背負う多額の借金と、空室・家賃下落・値下がりのリスクで、減らせた税金以上に損をすることが少なくありません。さらに2022年には、行き過ぎた節税が最高裁で否認された事例も出ました。この記事では、相続税対策アパートの仕組み/なぜやめとけと言われるのか/最高裁判決/まっとうな相続対策まで、独立系FPがフラットに解説します。
- 「評価が下がる=得」ではない:減らせた税金より、値下がり・空室の損失が大きいことも
- 多額の借金+長期リスク:数千万〜億の借入。空室・家賃下落・修繕・金利を何十年も背負う
- 相続後に子が苦労:古いアパートとローン(負動産)を相続し、売れず分割もしにくい
- 行き過ぎた節税は否認:2022年最高裁が国税の再評価・追徴を適法と認めた
先に結論
- ✕借金してアパートを建てる相続税対策は、節税額より損失が上回りやすい。「評価減=得」ではない
- ✕「30年一括借り上げ」とセットの勧誘はサブリースの罠。行き過ぎた節税は否認もある
- ◎相続対策はまず税理士に試算。生前贈与・保険の非課税枠・現金の計画活用を「不動産ありき」で考えない
相続税対策アパートとは?仕組みをわかりやすく解説
仕組みはシンプルです。現金で持っているより、その現金で(さらに借金もして)アパートを建てたほうが、相続税の評価額が下がる——これを使った節税策です。
| 持ち方 | 相続税の評価 |
|---|---|
| 現金 1億円 | 1億円(額面どおり) |
| 更地(自分の土地) | 路線価ベース(おおむね時価の8割程度) |
| アパートを建てた土地・建物 | さらに評価減(貸家建付地・貸家の評価減)+借入金は債務として差し引ける |
こうして評価額(=相続税の計算のもとになる金額)を圧縮するわけです。たしかに相続税は下がる。でも、ここに大きな落とし穴があります。
相続税対策アパートが「やめとけ」と言われる4つの理由
① 節税額より、損失のほうが大きくなりやすい
いちばんの問題はこれ。相続税を数百万円減らすために、数千万〜億円の借金を背負い、値下がり・空室・家賃下落・修繕・金利のリスクを何十年も抱える——トータルで見ると、減らせた税金よりも、物件で出る損失のほうが大きくなることが珍しくありません。「節税できた」と思っても、資産全体ではマイナス、という本末転倒に陥りがちです。
② 多額の借金とサブリースの罠
アパート建築は数千万〜億円のローンが前提。そして多くは「30年一括借り上げ(サブリース)で空室でも安心」とセットで売られます。でもサブリースの家賃保証は2年ごとに減額できるのが普通で、永続ではありません(→サブリースの記事)。空室・家賃下落のリスクは、結局オーナーに返ってきます。
③ 相続した家族が「負動産+ローン」で苦労する
節税のつもりで建てたアパートが、相続する子どもにとっては古い建物・残ったローン・空室リスクという“負動産”になることも。売りたくても買い手がつかない、兄弟で分けられず揉める——相続を“ラク”にするはずが、かえって家族の負担になるケースは少なくありません。
④ 行き過ぎた節税は否認される(2022年最高裁)
2022年4月、相続不動産を通常の評価ルールで低く申告したケースを、国税庁が再評価して追徴課税し、最高裁がそれを適法と認めた判決が出ました(市場価格約14億円の物件を約3億円で申告→否認)。借入が「節税目的」と判断されたことが重視されています。「ルールどおりに評価したつもりでも、行き過ぎた節税は否認されうる」(財産評価基本通達6項)——節税ありきの不動産購入・建築のリスクが、はっきり示されました。


「評価が下がる=得」ではない|トータルで考える
大事なのは、「相続税がいくら減るか」だけでなく、資産全体でプラスかマイナスかで考えることです。
| 見えている効果 | 見落としがちなコスト・リスク |
|---|---|
| 相続税の評価額が下がる | 建築費(割高なことも)・多額のローン金利 |
| 「家賃収入が入る」 | 空室・家賃下落・修繕費・固定資産税・サブリース減額 |
| 「資産が残る」 | 築古化で値下がり、売りにくい、相続で分割しにくい |
節税は“目的”ではなく、健全に必要なときだけ、専門家と一緒に検討する手段。「節税になるから」だけを理由に、大きな借金とリスクを背負うのは危険です。
まっとうな相続・資産対策|不動産ありきにしない
そもそも、相続税はすべての家庭にかかるわけではありません。まずは順番に考えましょう。
- ① 税理士に試算してもらう:基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)でそもそも非課税のことも多い
- ② 生前贈与:暦年贈与・相続時精算課税など、計画的に
- ③ 生命保険の非課税枠:500万円×法定相続人まで非課税で渡せる
- ④ 現金・新NISAで“使えるお金”を残す:いざというとき分けやすく、納税資金にもなる
「不動産で評価を圧縮」は、これらを検討したうえでの最後の選択肢。ローンを背負うより、新NISAなどで流動性の高い資産を残すほうが、家族にとってもラクなことが多いのです。


すでに建てた・勧誘されている人へ
「もう建ててしまった」「いま土地活用を勧誘されている」という人は、次を確認しましょう。
- 勧誘中の人:その場で契約しない。「本当に相続税がかかるのか」をまず税理士に試算してもらう
- 収支・出口の試算:毎年の収支と、売却した場合の価格・残債を“見える化”
- サブリース契約は条項確認:賃料見直し(減額)・解約条件・免責期間
- 相談先:建てた会社ではなく、税理士・独立系FPなど第三者に。家族とも共有する
よくある質問(相続税対策アパートのFAQ)
結局どうすればいい?
- ✕「節税になる」だけでアパートを建てない。借金と空室・値下がりで損が上回りやすい
- ✕「30年一括借り上げ」はサブリースの罠。行き過ぎた節税は否認されることも
- ◎相続対策はまず税理士に試算。生前贈与・保険の非課税枠・現金や新NISAで備える
- ◎建てた人は収支・出口を試算し、第三者に相談。家族と共有しておく
「評価が下がって節税」の裏に、何十年もの借金と空室リスクがあります。
相続対策は、不動産ありきではなく“まず試算”から🐾
🐾 「相続税対策にアパートを」とすすめられたら
FPねこは独立系の現役FP。建築会社のように物件を売り込むことはありません。本当に相続税がかかるのか、その対策にアパートが必要なのか、家族にとってラクな資産の残し方を、あなたの状況に合わせて無料で相談できます。契約・着工前にぜひご相談を。
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