銀行が出す上限は、あなたが無理なく暮らせる額ではなく、統計上こげつきにくい額。この2つは、まったく別の数字です🐾
家を買おうと思ったとき、多くの人がまず銀行や不動産会社に聞きます。「うちはいくらまで借りられますか?」——そして返ってきた数字を、そのまま予算にしてしまいます。
ここがいちばん危ないポイントです。銀行が出す数字は「あなたが返せる額」ではありません。「貸しても回収できる見込みが高い額」です。この2つはまったく違うのに、同じ数字だと思ってしまう。
この記事では、その差がどれくらいあるのかを実際に計算し、自分で「返せる額」を出す手順をお伝えします。金利を選ぶ前に決めるべきなのは、金額のほうです(→変動 vs 固定はこちら)🐾
先に結論
- !銀行の上限は年収の7.6倍まで出ます。年収500万円なら約3,789万円。これは総返済負担率35%・審査金利3%という基準から自動的に出てくる数字で、あなたの生活は一切考慮されていません
- ◎「返せる額」は年収の3倍前後。同じ年収500万円で、住居費を手取りの25%以内に収めて計算すると約1,588万円。差は約2,200万円あります
- !銀行が最大限貸したいのは、悪意ではなく構造です。融資額が大きいほど利息収入が増え、団信と担保でリスクは抑えられている。だから上限を提示するのが合理的——止める役目の人は、そこにいません
- !住居費はローン返済だけではありません。マンションなら管理費11,503円+修繕積立金13,054円(国交省調査の平均)+固定資産税。維持費だけで35年に約1,530万円です
- △金利は上がり始めています。政策金利は2026年6月に約1%(約31年ぶり)。変動が3%になれば、上限まで借りた人の返済は月約3.9万円増えます🐾
① なぜ銀行は「最大限」を提示するのか
まず誤解を解いておきます。銀行は悪意で多く貸そうとしているわけではありません。そういう構造になっているだけです。
| 銀行側の事情 | 中身 |
|---|---|
| 収益が融資額に比例する | 住宅ローンの収益は利息です。貸す額が大きく、期間が長いほど、受け取る利息は増えます |
| 貸し倒れリスクが小さい | 団体信用生命保険で万一のときは残債が消え、返済不能になれば担保である住宅を処分できます(→団信の記事) |
| 審査は「返せるか」ではなく「基準を満たすか」 | 審査で見るのは年収に対する返済額の割合や勤続年数などの形式的な条件。あなたの家族構成・教育費の予定・老後の計画までは見ていません |
誰も「やめておいたら」とは言いません
売る人・貸す人の全員が、金額が大きいほど得をする不動産会社の仲介手数料は物件価格に比例します。銀行の利息収入は融資額に比例します。ハウスメーカーの利益も同じです。
つまりあなたのまわりにいる専門家は全員、金額が大きくなるほど得をする側にいます。これは誰かが悪いという話ではなく、そういう仕組みだというだけのこと。
だからこそ「返せる額」を計算する役目は、あなたしかいません(→“あなたのため”という言葉との付き合い方)🐾
② 銀行の上限は、こう決まっています
実は計算式はとてもシンプルで、誰でも自分で出せます。
| 要素 | 基準 |
|---|---|
| 総返済負担率 | フラット35では年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下。自動車ローン・カードローン・奨学金なども合算されます |
| 審査金利 | 実際に借りる金利ではなく、おおむね3%程度のストレス金利で計算するのが一般的です |
| 返済期間 | 35年が基準。長くするほど月々は下がり、借りられる額は増えます |
年収500万円なら、500万円 × 35% = 年175万円(月14.6万円)。これを審査金利3%・35年で割り戻すと約3,789万円——年収の7.6倍です。
※年収500万円・返済期間35年・元利均等での試算です。「銀行が貸せる額」は総返済負担率35%(年間175万円)を審査金利3.0%で割り戻したもの。「無理なく返せる額」は手取りを額面の約78%(月32.5万円)とし、住居費をその25%以内に収め、維持費36,432円を差し引いた額を実行金利1.0%で割り戻したものです。手取り率・維持費・金利の前提が変われば金額も変わります。
右側の1,588万円が、どうやって出てきたのか。次で説明します🐾
③「返せる額」の出し方(3ステップ)
ステップ1:額面ではなく「手取り」で考える
銀行は額面年収で計算します。でもあなたが実際に使えるのは手取りです。年収500万円なら手取りは約390万円(月32.5万円)。この時点で、判断の土台が2割ずれています。
ステップ2:住居費は「手取りの25%以内」に
ここが本題です。ローン返済だけを25%に収めるのではありません。住居費の合計を25%以内にします。
※管理費11,503円・修繕積立金13,054円は国土交通省「マンション総合調査」(令和5年度)の一戸あたり月額平均、固定資産税は年12万円を月割りした仮の数字です。戸建ての場合は管理費・修繕積立金はかかりませんが、そのぶん外壁・屋根・給湯器などの修繕費を自分で積み立てる必要があり、結果として同程度の備えが要ります。なお同調査では、修繕積立金が長期修繕計画上の必要額を下回るマンションが36.6%(20%以上不足が11.7%)あり、将来的な値上げの可能性は織り込んでおくべきです。
年収500万円なら、手取り32.5万円 × 25% = 住居費の上限は月81,250円。ここから維持費36,432円を引くと、ローン返済に回せるのは月44,818円。これを実行金利1.0%・35年で割り戻して約1,588万円です。
ステップ3:金利が上がっても耐えられるか確認する
※上限まで借りた場合(3,789万円・35年・元利均等)の毎月返済額を、金利別に単純計算したものです。実際の変動金利型は5年ルール・125%ルールなど返済額の見直しに関する取り決めが商品ごとにあり、返済額の増え方はこの通りにはなりません(未払利息が生じる場合もあります)。日本銀行の政策金利は2026年6月に約1%と、約31年ぶりの水準まで上がっています。
政策金利は2026年6月に約1%まで上がりました。約31年ぶりの水準です。上限いっぱいまで借りた場合、金利が3%になると月の返済は約3.9万円増えます。
年収は増えていないのに、返済だけが増える——これに耐えられるかどうかが、変動金利を選ぶ条件です(→変動 vs 固定の判断軸)🐾
④ 年収別・早見表
| 年収 | 銀行が貸せる額 | 無理なく返せる額 | 差 |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 約3,031万円(7.6倍) | 約1,012万円(2.5倍) | 約2,019万円 |
| 500万円 | 約3,789万円(7.6倍) | 約1,588万円(3.2倍) | 約2,202万円 |
| 600万円 | 約4,547万円(7.6倍) | 約2,163万円(3.6倍) | 約2,384万円 |
| 700万円 | 約5,305万円(7.6倍) | 約2,739万円(3.9倍) | 約2,566万円 |
| 800万円 | 約6,063万円(7.6倍) | 約3,315万円(4.1倍) | 約2,748万円 |
面白いのは「返せる額」の年収倍率が、年収が上がるほど大きくなることです。理由は維持費が年収に関係なく一定だから。年収が低いほど、維持費の重みが効いてくるのです🐾
⑤ 現実とのギャップを、正直に
ここで都合の悪い事実もお伝えします。実際に家を買っている人の数字は、この試算とかなり違います。
| 種類 | 年収倍率(2025年度) | 所要資金 |
|---|---|---|
| 土地付注文住宅 | 7.8倍 | 約5,313万円 |
| 新築マンション | 7.5倍 | 約5,882万円 |
| 中古住宅(マンション・戸建) | 5倍台 | 中古マンション 約3,602万円 |
実勢は年収の7.5〜7.8倍。つまり多くの人が「銀行の上限」に近いところで買っているのが現実です。この記事の試算(3倍前後)とは大きく開いています。
ここで大事なのは「みんなが買っているから安全」ではない、ということです。年収倍率7倍台が成立してきたのは、長く超低金利が続いてきたから。その前提が2024年以降、変わり始めています。
とはいえ「だから絶対に買うな」とも言いません。取れる選択肢は複数あります。
- 中古にする…年収倍率は5倍台。新築との差は大きく、いちばん現実的な調整弁です
- エリアを変える…同じ予算で選べる範囲が変わります。通勤時間との交換になるので、時間の価値も含めて考えます(→職住近接のすすめ)
- 頭金を厚くする…借入額そのものを下げる、いちばん素直な方法です
- 買わない(賃貸を続ける)…当サイトはそもそも賃貸のほうが合理的なケースが多いという立場です(→賃貸 vs マイホーム)
やってはいけないのは、期間を伸ばして月々を下げることだけで解決しようとすること。総額の利息は増え、完済年齢は上がります🐾
⑥ 銀行に行く前に、やっておくこと
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 手取り月収を確認する。額面ではなく、実際に振り込まれる金額。ボーナスは当てにしないで計算します(→ボーナスは“幻”) |
| 2 | 住居費の上限を決める。手取りの25%以内。教育費のピークが来る時期がある人は20%で見ておくと安全です |
| 3 | 維持費を引く。管理費・修繕積立金・固定資産税・火災保険。ここを忘れると必ず足りなくなります(→火災保険の見直し) |
| 4 | 残った額で借入額を逆算する。ここで出た数字があなたの予算です |
| 5 | 生活防衛資金は使わない。頭金に全部入れてはいけません(→生活防衛資金) |
| 6 | その金額を先に決めてから物件を見に行く。順番が逆だと、気に入った物件に合わせて予算が伸びます |
いちばん効くのは「先に決めておく」こと
物件を見てから予算を決めると、必ず膨らむ人はいま目の前にある選択肢に引きずられます。先に物件を見てしまうと、「あと200万円出せば理想に届く」が何度も起きます。
だから数字を先に、物件をあとに。紙に書いて、不動産会社に見せる前に自分で握っておく——これだけで結果はかなり変わります(→決めないことのコスト)🐾
よくある質問(猫がお答えします)

子どもが何人いるか、教育費のピークがいつ来るか、親の介護があるか、老後にいくら必要か——こういうのは一切入っていないにゃ。
それに銀行には団信と担保があるにゃ。最悪の場合でも回収できる仕組みがあるから、上限まで提示するのが合理的にゃ。悪意じゃなくて構造にゃ。だから止める役目は自分でやるしかないにゃ🐾


でも思い出してほしいにゃ。年収の7倍が成立してきたのは、超低金利が続いてきたからにゃ。2026年6月に政策金利は約1%まで上がったにゃ。前提が変わりつつあるにゃ。
それと25%は「住居費の合計」にゃ。ローン返済だけなら、もっと高い割合でも回るケースはあるにゃ。30%を上限として、教育費のピークが重い人は20%——このくらいの幅で考えるのが現実的にゃ。大事なのは数字そのものより、自分で計算して納得しているかどうかにゃ🐾


①払う利息の総額が増えるにゃ。②完済年齢が上がるにゃ。35歳で40年なら75歳まで返済にゃ。年金生活に入ってからも返し続けることになるにゃ。③元本の減りが遅いから、売りたくなったときに売却額がローン残高に届かない期間が長くなるにゃ。
期間を伸ばすのは「月々を軽くする」ためであって「高い家を買う」ためじゃないにゃ。ここを取り違えると危ないにゃ🐾


どちらかが働けなくなる・産休育休で収入が減る・離婚する——このときに2人分の収入を前提にした返済額が残るにゃ。ペアローンは団信もそれぞれ別だから、片方に万一があってももう片方の債務は消えないのがふつうにゃ。
だから合算するなら、「1人の収入だけになっても、しばらくは持ちこたえられるか」を必ず確認にゃ。2人で返せる額いっぱいまで借りるのは、いちばん危ないパターンにゃ🐾


①借り換えを検討にゃ。金利差があるなら効果は大きいにゃ(手数料込みで比較にゃ)。②固定費を削るにゃ。通信・保険・サブスクは今日から効くにゃ。③繰上返済は生活防衛資金を確保してからにゃ。手元のお金を全部入れるのは危険にゃ。
そして売却という選択肢を最初から捨てないことにゃ。返済が生活を壊し始めているなら、早い段階で動くほど選択肢が多いにゃ。追い込まれてからでは足元を見られるにゃ。いちばんダメなのは、誰にも言わずに耐えることにゃ🐾

まとめ
- 「借りれる額」と「返せる額」は別の数字です。年収500万円なら銀行の上限は約3,789万円(年収の7.6倍)、無理なく返せるのは約1,588万円(3.2倍)。差は約2,200万円
- 銀行が最大限提示するのは構造です。融資額に比例して利息が増え、団信と担保でリスクは抑えられている。売る側・貸す側の全員が、金額が大きいほど得をします
- 住居費はローン返済だけではありません。管理費11,503円+修繕積立金13,054円+固定資産税。維持費だけで35年に約1,530万円、しかも修繕積立金は値上げされることがあります
- 金利は上がり始めています。政策金利は2026年6月に約1%。上限まで借りて金利3%になれば、返済は月約3.9万円増です
- 手順は、手取りを出す→住居費の上限を決める→維持費を引く→借入額を逆算する。そしてその数字を先に決めてから物件を見に行くこと。順番が逆だと、予算は必ず膨らみます🐾
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※本記事は2026年8月時点の一般的な情報提供であり、特定の金融機関・住宅・不動産会社の利用を推奨するものではなく、融資の可否・条件・返済の成否を保証するものでもありません。総返済負担率の基準(年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下、住宅ローン以外の借入れの返済額も合算すること)は住宅金融支援機構【フラット35】の基準であり、民間金融機関の審査基準・上限は各社および個別の事情により異なります。審査金利がおおむね3%程度とされる点は一般的な傾向であり、実際に用いられる金利および算定方法は金融機関によって異なり、公表されていない場合もあります。記事中の試算はいずれも、返済期間35年・元利均等返済・ボーナス返済なし・手取りを額面年収の約78%・維持費を月36,432円(管理費11,503円+修繕積立金13,054円+固定資産税を月割りした仮の12万円/年)・実行金利1.0%・審査金利3.0%という前提を置いた単純化したモデルであり、実際の借入可能額・返済額・必要額は、年収の内訳、家族構成、他の借入れ、勤務先、物件、金融機関、団体信用生命保険の種類、諸費用、税制、地域等により大きく異なります。手取り額は社会保険料・税額により変動します。管理費および修繕積立金の平均額(一戸あたり月額11,503円・13,054円)、修繕積立金が長期修繕計画上の必要額を下回るマンションの割合(36.6%、うち20%以上不足が11.7%)は国土交通省「マンション総合調査」(令和5年度)に基づく数値です。年収倍率(土地付注文住宅7.8倍・新築マンション7.5倍・中古住宅5倍台)および所要資金、平均世帯年収716万円は住宅金融支援機構「【フラット35】利用者調査」(2025年度)に基づく数値であり、同調査はフラット35の利用者を対象としたもので、住宅取得者全体の平均とは異なります。日本銀行の政策金利および住宅ローン金利の水準に関する記述は2026年8月時点の一般的な情報であり、金利は今後変動します。変動金利型には5年ルール・125%ルール等、返済額の見直しに関する取り決めが商品ごとにあり、金利上昇時の返済額の増え方は記事中の単純計算とは異なります(未払利息が生じる場合があります)。借入額・返済計画については、複数の金融機関で試算を取り、ご自身の状況をふまえて判断してください。

