じつは日本には遺族年金という公的な仕組みがあります。保険に入る前に、まずこれを知ってください。
知らないまま保険を選ぶと、払いすぎるか、足りないかのどちらかになります🐾
生命保険の相談で、いちばん多い質問がこれです。「うちはいくら保障が必要ですか?」
この問いに答えるには、先に知っておくべきことがひとつあります。公的な遺族年金がいくら出るのかです。
ここを飛ばして保険を選ぶと、必ず間違えます。遺族年金があるのに生活費の全額を保険でまかなおうとすれば払いすぎですし、逆に遺族年金が思ったより少ないケースを知らなければ、備えが足りません。
この記事では令和8年度(2026年度)の実額で計算し、2028年4月から始まる大きな改正までお伝えします🐾
先に結論
- ◎会社員の家庭なら、思ったよりもらえます。夫が35歳で死亡・妻と子2人・平均標準報酬額40万円なら年1,828,190円(月およそ15万2千円)。まず、ここを知ってください
- !ただし、ずっとは続きません。子が1人になれば月13万2千円、子が全員18歳年度末を過ぎると月9万4千円、65歳からは月4万1千円。階段状に減っていきます
- !子がいないと、遺族基礎年金はゼロです。受け取れるのは遺族厚生年金だけ。自営業・フリーランス(国民年金のみ)で子がいない場合は、遺族年金がまったく出ないこともあります
- !2028年4月から制度が変わります。男女差が解消され、子のいない方は60歳未満で死別すると原則5年間の有期給付に。ただし収入要件は廃止され、額は上乗せされます
- ◎だから保険で備えるのは「差額」だけです。生活費25万円のケースなら不足は月97,651円。掛け捨ての生命保険で用意するのはここです(→必要な保険はこの3つだけ)🐾
① 遺族年金は2種類あります
まず全体像から。遺族年金は2階建てです(→年金の仕組み)。
| 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 | |
|---|---|---|
| だれが対象 | 国民年金の加入者(全員) | 厚生年金の加入者(会社員・公務員) |
| だれが受け取る | 子のある配偶者または子 | 配偶者・子・父母・孫・祖父母(この順) |
| いくら | 年847,300円+子の加算 | 報酬比例部分の4分の3 |
| いちばんの注意 | 「子」がいないと出ません | 収入・加入期間で人により変わります |
ここでいう「子」には条件があります。18歳になった年度の3月31日まで(障害等級1級・2級なら20歳未満)で、結婚していないこと。
つまり高校卒業のタイミングで「子」ではなくなります。大学生になっても対象外です。ここが最初の落とし穴です。
なお亡くなった当時おなかにいた子も、生まれれば対象になります🐾
② いくらもらえるのか(令和8年度の実額)
遺族基礎年金
| 子の人数 | 年額 | 月あたり |
|---|---|---|
| 子なし | 0円 | 0円 |
| 子1人 | 1,091,100円 | 約90,925円 |
| 子2人 | 1,334,900円 | 約111,242円 |
| 子3人 | 1,416,200円 | 約118,017円 |
基本額が847,300円、そこに子の加算が付きます。1人目・2人目は各243,800円、3人目以降は各81,300円と、3人目から金額が下がります。
遺族厚生年金
会社員・公務員だった場合、これが上乗せされます。亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。
若くして亡くなっても、不利になりません
加入期間が短くても「300月」として計算されます厚生年金の加入がまだ10年しかない——そんな方が亡くなった場合、単純計算では遺族厚生年金はごくわずかになってしまいます。
そこで加入期間が300月(25年)に満たない場合は、300月とみなして計算するルールがあります(在職中の死亡など一定の要件を満たす場合)。
若い世代ほど、この仕組みに助けられます🐾
| 平均標準報酬額 | 遺族厚生年金(年) | 遺族基礎(子2人)と合計 | 月あたり |
|---|---|---|---|
| 25万円 | 308,306円 | 1,643,206円 | 約136,934円 |
| 30万円 | 369,968円 | 1,704,868円 | 約142,072円 |
| 40万円 | 493,290円 | 1,828,190円 | 約152,349円 |
| 50万円 | 616,612円 | 1,951,512円 | 約162,626円 |
| 65万円 | 801,596円 | 2,136,496円 | 約178,041円 |
平均標準報酬額とは、ざっくり言えばボーナスも含めた月あたりの平均収入です。年収480万円なら月40万円が目安になります。
③【重要】遺族年金は減っていきます
ここがこの記事でいちばんお伝えしたいことです。
※会社員の夫が35歳で亡くなり、妻と子2人(5歳・3歳)が遺されたモデルケースです。平均標準報酬額を40万円、厚生年金の加入期間は300月みなしとして計算しています。金額は令和8年度(2026年度)の額によるもので、毎年度改定されます。中高齢寡婦加算は妻が40歳から65歳になるまでの加算のため、子が18歳年度末を過ぎた時点の妻の年齢によっては受けられない場合があります。65歳以降はご自身の老齢基礎年金が加わりますが、この図には含めていません。
月15万円が一生続くわけではありません。子が高校を卒業するたびに減り、全員が卒業すると遺族基礎年金は終わります。
そのあと妻が40歳から65歳の間であれば、中高齢の寡婦加算(年635,500円)が付きます。これが遺族基礎年金の代わりのような役割を果たします。
そして65歳になると寡婦加算も終わり、自分の老齢年金が始まります。
いちばん厳しいのは「子が卒業してから65歳まで」の期間です。
この時期は子の学費がかかるうえに、遺族基礎年金がもう出ません(大学生は「子」に該当しないため)。ここをどう乗り切るかが、備えを考えるうえでの本当のポイントです(→子どもの学費の備え方)🐾
④ 2028年4月から、制度が変わります
2025年に成立した年金制度改正法により、遺族厚生年金の男女差が解消されます。
※厚生労働省の社会保障審議会年金部会に提出された資料に基づく、子のいない場合の整理です。男性は2028年4月から、女性は2028年4月から20年かけて段階的に実施されます。所得や障害の状態により配慮が必要な場合は5年目以降も給付が継続され(最長65歳まで)、有期給付の収入要件(年収850万円未満)は廃止、有期給付加算や死亡分割により額は上乗せされます。子がいる場合は、上記の年齢を超えるまでは現行制度と同じ扱いです。施行に向けて詳細が示される見込みのため、最新情報をご確認ください。
| いまの仕組み | 2028年4月から | |
|---|---|---|
| 女性 | 30歳未満で死別は5年で終了 30歳以上で死別は一生涯 | 男女とも 60歳未満で死別 → 原則5年間 60歳以上で死別 → 一生涯 |
| 男性 | 55歳未満で死別は給付なし 55歳以上は60歳から一生涯 | |
| 収入要件 | 年収850万円未満 | 有期給付は廃止 |
| 金額 | — | 有期給付加算・死亡分割で上乗せ |
男性にとっては拡大、女性にとっては縮小という側面があります。ただし単純に「減る」話ではありません。収入要件が廃止され、金額も上乗せされます。
あわてなくて大丈夫な人
多くの方は、いままでと変わりません60歳以上で死別した方、子を育てている間の方、すでに遺族厚生年金を受け取っている方——この方たちは変わりません。
さらに2028年度に40歳以上になる女性も、いまのままです。女性については2028年4月から20年かけて段階的に移行するためです。
影響が大きいのは「子がいない現役世代」。5年で切れる前提で、貯蓄と掛け捨て保険を考えておく必要があります🐾
⑤ 見落とされやすい落とし穴
| 落とし穴 | 中身 |
|---|---|
| 自営業・フリーランス | 厚生年金がないので遺族厚生年金は出ません。子がいなければ遺族年金はゼロのことも。会社員より手厚く備える必要があります |
| 「子」は高校卒業まで | 18歳になった年度の3月31日まで。大学生は対象外。学費がかかる時期に減ります |
| 年収850万円の壁 | 受け取る側が年収850万円以上だと原則もらえません(おおむね5年以内に下回る見込みがあれば対象)。※2028年4月からは有期給付について廃止 |
| 夫が受け取る場合 | 現行は死亡当時55歳以上が条件で、受給開始は60歳から(遺族基礎年金を受給中なら60歳前でも併給可) |
| 自分の老齢年金との関係 | 65歳以降は両方まるごともらえるわけではありません。自分の老齢厚生年金が優先され、差額の調整があります |
⑥ では、保険はいくら必要なのか
※遺されたご家族に必要な生活費を月25万円と仮定した場合のイメージ図です。必要な生活費は家族構成・住まい・働き方によって大きく変わります。住居費は、住宅ローンに団体信用生命保険が付いていれば返済がなくなるため大きく減ります。一方で遺族年金は前の図のとおり時間とともに減るため、実際にはもっと細かく見積もる必要があります。この図は考え方を示すためのもので、必要保障額を算定するものではありません。
ここまで分かれば、答えは簡単です。必要な生活費から遺族年金を引いた「差額」——これが生命保険で用意すべき額です。
月25万円必要なケースなら、遺族年金で152,349円まかなえるので、不足は月97,651円。18年ぶんで約2,109万円になります。
さらに引けるものがあります
住宅ローンがあるなら、団信で住居費が消えます住宅ローンを組んでいれば、団体信用生命保険が付いています。契約者が亡くなればローンはなくなります(→団信の話)。
つまり住居費のぶんは、必要保障額から引けるということ。遺族年金と団信を数えたうえで、それでも足りない分だけを掛け捨てで買う——これが当サイトの考え方です。
貯蓄型の保険は必要ありません(→貯蓄型保険をおすすめしない理由)。保障は掛け捨て、貯蓄はインデックス投資で十分です🐾
⑦ 結局どうすればいいのか
やることの順番
- まず「ねんきん定期便」を見る。厚生年金の加入期間と平均収入がわかれば、遺族厚生年金の概算が出せます
- 次に必要な生活費を出す。今の生活費から、亡くなった方本人の分(食費・小遣い・保険料など)を引きます
- 遺族年金と団信を引く。残った差額が、本当に必要な保障額です
- 差額を掛け捨ての生命保険で用意する。収入保障保険なら、必要保障額の減り方と形が合います(→必要な保険はこの3つだけ)
- 自営業・フリーランスは厚めに。遺族厚生年金がないぶん、備えを増やす必要があります
- 子がいない現役世代は、2028年の改正を前提に。5年で切れることを織り込んで、貯蓄で備えるのが基本です
- 不安なら年金事務所へ。個別の受給可否と金額は、必ず年金事務所で確認してください。無料です🐾
よくある質問










まとめ
- 会社員・子2人なら月およそ15万2千円(年1,828,190円)。まず知ることから
- ずっとは続きません。月13万2千円 → 9万4千円 → 4万1千円と階段状に減ります
- 子がいなければ遺族基礎年金はゼロ。自営業で子なしなら、遺族年金が出ないことも
- 2028年4月から男女差が解消。子のいない60歳未満は原則5年の有期給付へ
- ただし収入要件は廃止、額は上乗せ。単純に減る話ではありません
- 保険で備えるのは差額だけ。遺族年金と団信を引いてから考えてください🐾
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※本記事は2026年8月時点の一般的な情報提供であり、特定の保険商品・金融商品への加入を推奨、勧誘、助言するものではありません。当サイトは保険の募集・媒介および金融商品取引業を行っていません。遺族基礎年金の額(年847,300円、昭和31年4月1日以前に生まれた方は844,900円)、子の加算額(1人目および2人目は各243,800円、3人目以降は各81,300円)、中高齢の寡婦加算額(635,500円)、遺族厚生年金が亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3であること、報酬比例部分の計算において平成15年4月以降の加入期間について平均標準報酬額に5.481/1000を乗じること、一定の要件に該当する場合に厚生年金保険の被保険者期間が300月未満でも300月とみなして計算すること、生計を維持されていた方が原則として年収850万円未満であること、「子」が18歳になった年度の3月31日までの間にあること(障害等級1級または2級に該当する場合は20歳未満)等は、日本年金機構が公表する令和8年度版の資料の記載に基づく概要です。年金額は毎年度改定され、令和8年4月分からは国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引上げとなっています。2028年(令和10年)4月からの遺族厚生年金の見直しに関する記述は、社会保障審議会年金部会に提出された厚生労働省の資料に基づくものです。男性は2028年4月から、女性は2028年4月から20年かけて段階的に実施されること、子のいない場合に60歳未満で死別したときは原則5年間の有期給付となること、所得や障害の状態により配慮が必要な場合は5年目以降も最長65歳まで給付が継続されること、有期給付について収入要件が廃止されること、有期給付加算および死亡分割により年金額が増額されること、子がいる場合は一定の年齢を超えるまでは現行制度と同様の扱いとなること、60歳以上で死別した方・子を養育する間にある方・改正前から遺族厚生年金を受け取っていた方・2028年度に40歳以上になる女性については変更がないこととされています。施行に向けて政省令等により詳細が定められる予定であり、内容が変更される可能性があります。本文および図中の試算は、会社員の夫が35歳で死亡し、妻と子2人が遺されたモデルケースについて、平均標準報酬額を40万円、厚生年金保険の被保険者期間を300月とみなして計算した概算であり、実際の年金額を保証するものではありません。実際の額は、加入期間、標準報酬月額および標準賞与額の実績、平成15年3月以前の加入期間の有無、再評価率、生年月日、共済加入期間の有無、ご本人の老齢年金との調整、その他の事情により異なります。65歳以上でご自身の老齢厚生年金を受ける権利がある方については、遺族厚生年金の額の計算方法および支給停止の取扱いが別に定められています。必要保障額に関する記述および図は考え方を示すためのイメージであり、個別の必要保障額を算定するものではありません。必要な生活費は家族構成、住まい、働き方等により大きく異なります。遺族年金の受給要件には保険料の納付要件その他の要件があり、要件を満たさない場合は受給できません。ご自身の受給可否および具体的な金額については、必ずお近くの年金事務所または「ねんきんダイヤル」にご確認ください。

