でもデータがそう言っています。
ただし大前提があります。良い株を、厳選して買うこと。
売る判断を減らしたいなら、買う判断を厳しくするしかありません🐾
投資の話になると、たいてい「何を買うか」が焦点になります。どの銘柄が上がるか、どこで買うか。
でも実際に手取りを左右していたのは、そこではありませんでした。
「何回売買したか」です。
今回は66,465世帯の実際の取引記録を分析した研究をもとに、なぜ売らないことが強いのか、そしてその前提として何を買うべきかを見ていきます。
あわせて、「売るな」と「損切りできない」の決定的な違いも整理します。ここを取り違えると、いちばん危ない持ち方になります🐾
先に結論
- ◎売買する前のリターンは、よく売買する人もしない人も18.5%〜18.7%でほぼ同じ。銘柄選びの腕に大差はありませんでした
- !手取りは年11.4%と年18.5%に分かれます。差は7.1ポイント。売買した回数だけで生まれた差です
- !100万円を20年置くと、866万円と2,981万円。その差は2,115万円になります
- ◎だから大前提は「良い株を厳選して買う」こと。売る回数を減らすために、買う判断を厳しくします
- ◎「売るな」と「損切りできない」は別物です。前者は買う前に決めるルール、後者は下がってから作る言い訳。危ないのは持つことではなく、負けた銘柄だけを持つことです🐾
① 売買した回数が、すべてを決めていました
※バーバーとオデーンが、米国の大手ディスカウント証券会社の66,465世帯について、1991年1月から1996年12月までの実際の取引記録を分析した研究の数値です。売買コストを差し引く前のリターン(グロス)は、売買頻度で分けた5つのグループすべてで年18.5%〜18.7%の範囲に収まり、ほとんど差がありませんでした。一方、売買コストを差し引いたあとのリターン(ネット)は、売買が最も多いグループが年11.4%、最も少ないグループが年18.5%でした。市場平均は年17.9%です。米国・当該期間のデータであり、日本市場や現在の相場環境に同じ結果が当てはまることを保証するものではありません。
この研究のすごいところは、「売買する前」と「売買したあと」を分けて見たことです。
売買する前のリターン——つまり選んだ銘柄そのものの成績は、どのグループも18.5%〜18.7%。差はわずか0.2ポイントでした。
よく売買する人が、特別に下手な銘柄を選んでいたわけではないのです。
ところが手取りは違いました。
よく売買するグループ:年11.4%
あまり売買しないグループ:年18.5%
市場平均:年17.9%
——7.1ポイントの差。これは銘柄選びではなく、売買という行為そのものが削った分です🐾
ちなみに売買が最も多いグループは、年間250%を超える回転率でした。持っている株を年に2回半、まるごと入れ替えている計算です。
研究者たちの結論は、論文のタイトルそのものです。「売買は資産に有害である」。
② その差は、時間が経つほど広がります
※上の研究で示された年率を用いて、100万円を20年間そのまま置いた場合を当サイトが単純に複利計算したものです。税金・為替・追加投資は考慮していません。実際には毎年同じリターンが続くことはなく、この計算は「わずかな年率の差が長期でどれだけ拡大するか」を示すための例示です。将来のリターンを示唆または保証するものではありません。
年7.1ポイントの差は、1年で見ればたいしたことがないように見えます。
でも20年置くと、866万円と2,981万円。差は2,115万円です。
| 年数 | 差は何倍になるか |
|---|---|
| 5年 | 1.36倍 |
| 10年 | 1.85倍 |
| 20年 | 3.44倍 |
| 30年 | 6.38倍 |
売買を減らすというのは、それだけで大きなリターン改善になりうるということです。
何かを当てる必要はありません。やらないだけでいいのです🐾
③ 大前提:まず「良い株」を厳選する
ここが抜けると、この記事はただの「塩漬け推奨」になってしまいます。
売らない前提で買うのだから、買う段階で徹底的に絞る必要があります。
買う前に確認すること
- 減配していないか。不況のときも配当を維持・増配できた会社かどうか。過去の実績は、経営の姿勢を映します
- 配当性向に余力があるか。利益のほとんどを配当に回している会社は、業績が少し傾くと減配します
- 株主還元の方針を公表しているか。累進配当・DOE・自社株買いなど、「どう還元するか」を明言している会社は読みやすいです
- 売上と営業利益率が伸びているか。配当だけ見て、事業が縮んでいる会社を買わないこと
- 利回りが高すぎないか。株価が下がったせいで利回りが高く見えているだけ——いわゆる罠銘柄でないかを確認します
- 自分がその事業を説明できるか。説明できない会社は、下がったときに持ち続けられません
- 1銘柄に集中しすぎていないか。売らない前提だからこそ、最初の配分がすべてです🐾
そして、いちばん大事な前提を書いておきます。
当サイトは、資産の土台はインデックス(オルカン・S&P500)でいいと考えています。個別株はその上に、余裕資金で乗せるものです。
「売らない」がいちばんきれいに成立するのは、実はインデックス積立です。銘柄が入れ替わってくれるので、こちらが売る必要がありません(→オルカンとS&P500の比較)🐾
④ 根拠なく売買することが、いちばん高くつきます
「なんとなく上がりそうだから買う」「なんとなく不安だから売る」。
これが年間250%の回転率を作ります。そして7.1ポイントを失わせます。
| 売る理由 | これは根拠になるか |
|---|---|
| 株価が下がったから | なりません。下がったこと自体は、企業の価値の変化を意味しません |
| 株価が上がったから | なりません。良い会社を手放す理由がありません |
| SNSで悪い噂を見たから | なりません(→噂の見分け方) |
| なんとなく不安だから | なりません。不安は情報ではありません |
| 減配・無配に転じた | なります。買った理由が崩れています |
| 事業の中身が変わった | なります。もう同じ会社ではありません |
| 不正会計などが発覚した | なります。前提としていた数字が信用できません |
| 生活のためにお金が要る | なります。投資は生活の下にあります |
売っていい場面は、ちゃんとあります。「売るな」は「絶対に売るな」ではありません。
「買った理由が崩れていないのに、株価だけを見て売るな」ということです🐾
⑤【重要】「売るな」と「損切りできない」は、まったく別のものです
※当サイトが両者の違いを整理したものです。「買ったら売るな」は買う前にルールを決め、すべての保有銘柄に同じ基準を適用する考え方を指します。一方、下がってから保有方針を変えることは、負けた銘柄だけを保有し続ける結果につながりやすいと指摘されています。なお、買った理由が失われた場合や資金が必要になった場合など、売却が合理的な場面は存在します。
ここを取り違えると、いちばん危ない持ち方になりますので、はっきり書きます。
当サイトでは以前、「下がったから持ち続ける」のは統計的に裏目だとお伝えしました(→こちらの記事)。売られた勝ち銘柄のほうが、持ち続けられた負け銘柄より、その後1年で3.4%高いリターンだった、という研究です。
「売るな」と言いながら「持ち続けるな」とはどういうことか——そう思われたかもしれません。両者は別の話です。
| 買ったら売るな | 損切りできない | |
|---|---|---|
| ルールを決める時点 | 買う前 | 下がったあと |
| 適用する範囲 | すべての銘柄 | 負けた銘柄だけ |
| 勝っている銘柄は | 同じく持ち続ける | さっさと売ってしまう |
| 売る条件 | 買った理由が崩れたとき | 決めていない |
| 結果として | 良い会社が育つ | 手元に負け銘柄だけが残る |
危ないのは「持つこと」ではありません
「負けた銘柄だけを持つこと」です勝っている銘柄を売り、負けている銘柄だけを残していく。これを繰り返すと、ポートフォリオは負け銘柄の墓場になります。
「買ったら売るな」は、これを防ぐためのルールです。勝っていても売らない。負けていても、理由が崩れていなければ売らない。
すべてに同じルールを当てる——それが「売るな」の意味です🐾
⑥ 売らないための、具体的な仕組み
意志ではなく、仕組みで守る
- 買った理由をメモに残す。「なぜ買ったか」を書いておくと、売る判断が「理由が崩れたか」だけになります
- 株価アプリを毎日開かない。見る回数が増えるほど、売りたくなります。これは意志の問題ではありません
- 配当を受け取る形にする。持っているだけで入ってくるものがあると、持ち続けやすくなります
- 最初から売らない金額で買う。生活費に手が届く金額を入れると、必ず売ることになります(→余剰資金の話)
- 1銘柄を大きくしすぎない。大きすぎると、値動きが怖くて持ち続けられません
- 年に1回だけ見直す日を決める。その日以外は何もしない。判断の回数そのものを減らします🐾
よくある質問










まとめ
- 売買する前のリターンは18.5%〜18.7%でほぼ横並び。銘柄選びの腕に大差はありませんでした
- 手取りは年11.4%と年18.5%。差の7.1ポイントは、売買した回数だけで生まれました
- 100万円を20年で866万円と2,981万円。その差2,115万円
- 大前提は「良い株を厳選する」。売る回数を減らすために、買う判断を厳しくします
- 売っていいのは、買った理由が崩れたとき。株価が動いたことは理由になりません
- 危ないのは持つことではなく、負けた銘柄だけを持つこと。ルールは買う前に、全部に等しく🐾
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※本記事は2026年9月時点の一般的な情報提供であり、特定の銘柄・金融商品の売買を推奨するものではありません。売買頻度別のリターン(売買コスト控除前のリターンが売買頻度で分けた5つのグループにおいて年18.5%から18.7%の範囲にとどまり差が小さいこと、売買コスト控除後のリターンが売買の多いグループで年11.4%・少ないグループで年18.5%であったこと、市場平均が年17.9%であったこと、平均的な世帯の年間回転率が75%であり売買が最も多いグループの年間回転率が250%を超えていたこと)は、Brad M. Barber and Terrance Odean, “Trading Is Hazardous to Your Wealth: The Common Stock Investment Performance of Individual Investors”, The Journal of Finance, Vol.55, No.2 (April 2000), pp.773-806 の記載に基づきます。同研究は米国の大手ディスカウント証券会社の66,465世帯について1991年1月から1996年12月までの取引記録を分析したものであり、対象は米国市場・当該期間のデータです。日本市場や現在の相場環境に同じ結果が当てはまることを保証するものではありません。売却された値上がり銘柄のその後1年間の超過リターンが保有され続けた値下がり銘柄より3.4%高かったことは、Terrance Odean, “Are Investors Reluctant to Realize Their Losses?”, The Journal of Finance, Vol.53, No.5 (October 1998), pp.1775-1798 の記載に基づきます。100万円を20年間運用した場合の金額は、上記の年率がそのまま継続すると仮定して当サイトが複利計算した例示であり、税金・為替・手数料・追加投資を考慮していません。実際には毎年同じリターンが継続することはなく、将来のリターンを示唆または保証するものではありません。本文中の「良い株を確認する観点」は一般的に用いられる指標を当サイトで整理したものであり、これらを満たす銘柄の値上がりや配当の継続を保証するものではありません。減配・無配転落・事業内容の変更・会計不正等は実際に発生しうるリスクです。個別株式への投資は元本を割り込む可能性があり、企業の倒産や上場廃止により投資額を失う場合もあります。当サイトは資産形成の土台として全世界株式やS&P500に連動する低コストのインデックスファンドへの長期・積立・分散投資を基本と考えており、個別株式への投資は余裕資金の範囲で行うことを前提としています。投資判断はご自身の責任において行ってください。
