「相続税対策、しないと大変なことになりますよ」——不動産会社や保険の営業で、こう言われた経験はありませんか?
でも独立系FPとして、まずはっきりお伝えします。ほとんどの人には、相続“税”対策は必要ありません。なぜなら、相続税は控除がとても手厚く、一般的な家庭ではそもそもかからないことが多いからです。実際、相続税がかかるのは亡くなった方の約1割だけ。
にもかかわらず、「相続税対策」という言葉でアパート経営や一時払い保険などの商品を売られるケースが後を絶ちません。
そして本当に大切なことは、たいてい見落とされています。それが「相続対策」=家族がもめないための準備です。相続税はかからなくても、“分け方”で親族が争う「争族」は誰にでも起こりえます。今日はこの違いを、2026年7月時点の最新ルールで正確に解説します🐾
先に結論
- ◎相続税がかかるのは全体の約1割だけ(令和5年分の課税割合は9.9%)。基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数。多くの家庭はこの範囲に収まり、そもそも非課税です
- ◎控除・特例がとにかく手厚い。配偶者は1億6,000万円(または法定相続分)まで非課税、生命保険金・死亡退職金は各500万円×法定相続人の数まで非課税、自宅の土地は小規模宅地等の特例で最大80%評価減
- ◎だから「相続税対策」名目の商品は、多くの人に不要。アパート・タワマン購入、一時払い保険などは、そもそも税金がかからない人には無意味で、むしろ値下がり・空室・流動性のリスクを抱えるだけです
- △資産が基礎控除を超える人だけ、正攻法の“制度活用”を。生命保険の非課税枠・小規模宅地・計画的な生前贈与など。ただし「商品ありき」ではなく、あくまで制度として使うのが鉄則です
- ✕本当に大切なのは「相続対策(=争族対策)」。誰がどう分けるか・遺言・納税や生活の資金・認知症への備え。税金ゼロの家庭でも“分け方”でもめます。ここを計画的に準備しましょう
① まず知ってほしい:相続税がかかる人は「約1割」だけ
「相続=相続税」というイメージが強いですが、実際に相続税を納めるのはごく一部です。国税庁の統計では、令和5年分(2023年)に相続税の課税対象になったのは、亡くなった方全体の9.9%。約10人に1人です。
理由は、「基礎控除」という大きな非課税枠があるから。正味の遺産額がこの基礎控除以下なら、相続税はかからず、申告も原則不要です。
※基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数。この金額までの遺産(正味の課税価格)には相続税がかかりません。たとえば「配偶者+子ども2人」なら相続人3人で4,800万円まで非課税。自宅と預貯金だけなら、これを超えない家庭が多いのです。2026年7月時点。
計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。たとえば——
- 配偶者+子ども2人(相続人3人)… 3,000万+600万×3=4,800万円まで非課税
- 子ども2人のみ(相続人2人)… 3,000万+600万×2=4,200万円まで非課税
自宅(後述の特例でさらに評価が下がります)と預貯金くらいの資産なら、この枠に収まって相続税ゼロという家庭が多いのです🐾
② 控除・特例がこんなに手厚い(だから多くの人はかからない)
基礎控除に加えて、相続税にはさらに強力な控除・特例があります。主なものはこちら。
| 制度 | 内容(2026年7月時点) |
|---|---|
| 配偶者の税額軽減 | 配偶者が受け取る遺産は、1億6,000万円、または法定相続分のどちらか多い金額まで相続税ゼロ(※適用には申告が必要) |
| 生命保険金の非課税枠 | 500万円×法定相続人の数まで非課税。相続人3人なら1,500万円分の保険金が非課税に |
| 死亡退職金の非課税枠 | 生命保険とは別枠で500万円×法定相続人の数まで非課税 |
| 小規模宅地等の特例 | 亡くなった方の自宅の土地は、一定の要件を満たせば330㎡まで評価額を80%減(特定居住用宅地等の場合)。土地の相続税評価を大きく下げられます |
これらを重ねると、「一次相続(夫婦の一方が亡くなる)では配偶者軽減でほぼゼロ」「自宅は小規模宅地で8割減」となり、多くの家庭で相続税は発生しません。控除が手厚いからこそ、慌てて“対策商品”を買う必要がないのです🐾
③ だから「相続税対策」の商品は、多くの人に不要(むしろ危険)
ここが本題のひとつ。「相続税対策」をうたって売られる商品の多くは、そもそも相続税がかからない人には無意味で、それどころか新たなリスクを背負い込むことになります。
「相続税が安くなる」は、たいてい“売るための言葉”です。相続税がかからない家庭が、節税を口実にアパートやタワマンを買えば、空室・家賃下落・修繕・売りにくさ(流動性の低さ)といったリスクを抱えるだけ。一時払いの保険も、非課税枠を超える部分や、そもそも課税されない人には旨みがありません。「税金が減る」より「その商品自体で損しないか」を先に考えるべきです。
- 相続税対策アパート・タワマン節税…借入で評価を下げる手法は、空室・値下がり・相続後の管理負担が重い。近年はタワマンの評価ルールも見直され、以前ほどの効果は期待しにくくなっています
- 一時払い終身保険での「節税」…非課税枠(500万×法定相続人)の範囲で使うなら合理的ですが、そもそも相続税がかからない人には不要。枠を超える加入は意味が薄れます
- 不要な生前贈与…相続税がかからない人が慌てて贈与しても、贈与税のほうが高くつくことも。制度を理解せずに動くのは禁物です
くわしくは相続税対策アパートはやめとけ?、節税目的の投資商品はやめとけ?もあわせてどうぞ🐾
④ 本当に大切なのは「相続対策」=もめないための準備
ではお金持ちでない人は何もしなくていいのか——いいえ、むしろ全員にやってほしいことがあります。それが「相続対策(争族対策)」です。相続税がゼロの家庭でも、“分け方”をめぐって親族が争うことは珍しくありません。
実際、家庭裁判所で扱われる遺産分割のもめごとは、相続財産が多くない家庭でも数多く起きています。「うちは仲がいいから大丈夫」が、いちばん危ないのです。相続対策の柱は次の4つ。
| 相続対策の柱 | 備えること |
|---|---|
| ① 分割対策 | 誰に何を、どう分けるか。自宅など“分けにくい財産”が中心だともめやすい。あらかじめ方針を家族で共有 |
| ② 遺言の準備 | 遺言書で意思を残す。とくに公正証書遺言は無効になりにくく安心。自筆の場合は法務局の保管制度も活用できます |
| ③ 納税・当面の資金 | 相続税がかかる場合の納税資金や、凍結される預金の代わりの生活費。生命保険は「すぐ受取人に渡る現金」として役立ちます |
| ④ 認知症への備え | 親が認知症になると預金の引き出しや不動産売却が凍結。任意後見・家族信託などを元気なうちに検討 |
ポイントは、税金対策より先に「もめない・困らない仕組み」をつくること。ここを飛ばして節税商品に走るのは、順番が逆なのです🐾
⑤ 今日からできる「計画的な相続対策」5ステップ
相続対策は、元気なうち・関係が良いうちに始めるのが鉄則。難しく考えず、この順番で進めましょう。
| ステップ | やること |
|---|---|
| STEP1 財産の棚卸し | 預貯金・不動産・保険・有価証券・借金まで一覧(財産目録)にする。まず「何がどれだけあるか」を把握 |
| STEP2 相続税がかかるか確認 | 正味の遺産額が基礎控除(3,000万+600万×人数)を超えるかをざっくり試算。超えなければ“税対策”は基本不要 |
| STEP3 分け方を家族で話す | 元気なうちに意向を共有。とくに自宅・事業など分けにくい財産は早めに方針を決める |
| STEP4 遺言書を残す | もめる可能性があるなら公正証書遺言を。自筆なら法務局の保管制度も検討 |
| STEP5 認知症・判断力の備え | 任意後見・家族信託などを検討。必要に応じて司法書士・税理士・弁護士など専門家に相談 |
お金をかけて商品を買うより、この5ステップのほうがずっと価値があります。しかも、ほとんどがお金をかけずにできることです🐾
⑥ 資産が基礎控除を超えそうな人へ(正攻法の制度活用)
「うちは基礎控除を超えそう」という方は、“商品ありき”ではなく“制度”として、次を検討する価値があります。いずれも正攻法で、税務署も認めた枠組みです。
- 生命保険の非課税枠を使う…500万円×法定相続人の数まで非課税。枠の範囲内なら、現金で残すより有利で、受取人にすぐ渡せる利点も
- 小規模宅地等の特例を活かす…自宅の土地評価を最大80%減。同居や生計要件があるため、誰が自宅を継ぐかを早めに整理
- 計画的な生前贈与…暦年課税の年110万円の非課税枠などを活用。ただし2024年以降の贈与は、相続開始前の一定期間ぶんが相続財産に持ち戻される(加算期間が3年から段階的に7年へ延長・2031年に完全移行)点に注意。相続時精算課税にも2024年から年110万円の基礎控除が新設されています
いずれも制度が複雑で、改正も続いています。基礎控除を超える資産がある場合は、自己判断で商品を買う前に、必ず相続に強い税理士に相談してください。「対策商品を売りたい人」ではなく「中立の専門家」に、が鉄則です🐾
よくある質問(猫がお答えします)

さらに自宅の土地は小規模宅地等の特例で最大80%も評価が下がるし、配偶者が受け取る分は1億6,000万円まで非課税にゃ。だから持ち家+預金くらいなら、超えない家庭が多いにゃ。
実際、相続税がかかるのは亡くなった方の約1割(9.9%)だけにゃ。まずは財産の棚卸しでざっくり試算してみるといいにゃ🐾


「相続税が減る」は売るための言葉のことが多いにゃ。減る税金より、その不動産自体で損しないかを先に考えるにゃ。
タワマン節税も評価ルールが見直されて、以前ほど効かなくなってるにゃ。くわしくは相続税対策アパートはやめとけ?を読んでにゃ🐾


だから大事なのは相続“対策”にゃ。①財産の棚卸し②分け方を家族で話す③必要なら遺言書(公正証書が安心)④認知症への備え(任意後見・家族信託)——にゃ。
ほとんどお金をかけずにできるし、元気で仲がいいうちにやるのがいちばん効くにゃ🐾


だから「亡くなる直前にまとめて贈与」は効きにくいにゃ。それにそもそも相続税がかからない人には、贈与そのものが不要なことも多いにゃ。
制度は複雑で改正も続くから、基礎控除を超えそうな人は相続に強い税理士に相談してにゃ🐾

まとめ
- 相続税がかかるのは約1割だけ(令和5年分9.9%)。基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数で、多くの家庭は非課税です
- 控除・特例が手厚い。配偶者は1億6,000万円(または法定相続分)まで、生命保険・死亡退職金は各500万円×法定相続人まで非課税、自宅は小規模宅地で最大80%減
- だから「相続税対策」商品は多くの人に不要。アパート・タワマン・一時払い保険は、税金がかからない人には無意味で、むしろリスクになります
- 基礎控除を超える人だけ、正攻法の制度活用を(生命保険の非課税枠・小規模宅地・計画的な生前贈与)。商品ありきではなく、中立の税理士に相談を
- 本当に大切なのは「相続対策」=もめない準備。財産の棚卸し→分け方の共有→遺言→認知症対策。税金ゼロでも争族は起こるので、元気なうちに計画的に🐾
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※本記事は2026年7月時点の一般的な情報提供であり、特定の商品の購入・不購入や個別の税務判断を助言・勧誘するものではありません。相続税・贈与税の制度は次のとおりです(2026年7月時点):基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数/配偶者の税額軽減=1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額まで(適用には相続税の申告が必要)/生命保険金・死亡退職金の非課税枠=それぞれ500万円×法定相続人の数/小規模宅地等の特例=特定居住用宅地等は330㎡まで評価額80%減(同居・生計要件等あり)。相続税の課税割合は国税庁「令和5年分 相続税の申告事績」に基づく9.9%です。生前贈与加算の期間は、2024年1月1日以降の贈与について3年から段階的に7年へ延長され、2031年1月1日以降の相続で完全移行します(相続開始年により加算年数が異なります)。相続時精算課税には2024年分から年110万円の基礎控除が新設されました。これらの数値・要件は制度改正により変わる可能性があり、実際の適用可否・税額は個々の財産構成・相続人の状況により異なります。相続税の要否判定、遺言・生前贈与・不動産・保険の活用、認知症対策(任意後見・家族信託)など具体的な判断は、必ず相続に強い税理士・司法書士・弁護士等の専門家にご相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。当サイトは節税を主目的とした不動産・保険商品を初心者に推奨していません。
